Research Project (1)

DNA-based Computing

【背景】

― DNAで情報を処理する

 DNAはA、C、G、Tいずれかの塩基を含む4種のデオキシヌクレオチドが連なった直鎖状分子の総称です。DNA分子どうしのちがいはデオキシヌクレオチドの並び方のちがいですから、各DNA分子種は「GATTACA」といった塩基配列で表されます。たとえばヒトの1番染色体DNAは、およそ2億5千万塩基長の配列になります。また、AとT、GとCという対合規則にしたがって、DNAの相補的な塩基配列を持った部分どうしは結合して二重らせんを形成します。

 規則的に結合するというDNAの性質を利用すると、計算(情報処理)を行うことができます。まず、電子コンピュータにならってDNAの塩基配列に意味を持たせます。電子コンピュータで使われているASCIIコードでは、「D」「N」「A」という3つのアルファベットは、{0, 1} の2進数でそれぞれ「100 0100」「100 1110」「100 0001」という配列と対応づけられています。電子コンピュータにとっては「100 0100 100 1110 100 0001」という配列が、「DNA」という文字列を意味します。DNAでも同じように考えると、「D」「N」「A」という3つのアルファベットをたとえば、「TTAGAC」「ATGTCC」「TGAGTG」という塩基配列とそれぞれ対応づけます。すると、「TTAGAC ATGTCC TGAGTG」という塩基配列が「DNA」という文字列を意味することになります。

 それでは、『ある3文字の文字列「XXX」(X はアルファベット A ~ Z のいずれか)のなかに「D」が含まれているか?』という問題は、どのようにしたらDNAで解くことができるでしょうか。この問題は、文字列「XXX」を意味する「xxxxxx xxxxxx xxxxxx」(x は A、C、G、Tいずれかの塩基)という塩基配列のなかに、「D」を意味する「TTAGAC」という配列が含まれているかどうかを検証する問題です。DNAは相補配列どうしが結合するので、「TTAGAC」の相補配列である「GTCTAA」という配列を持った検証用DNAを投入し、この検証用DNAと結合したDNAが回収された場合はそのDNAの塩基配列は「TTAGAC」を含んでいる、つまりアルファベット「D」を含んでいる。回収されなかった場合は含んでいない、ということがわかります。

― in vitro Intelligenceに向けて

 このように、DNAの塩基配列を文字列とみなし、遺伝子工学で用いられる様々な実験手法を用いてDNAを切ったりつなげたりして文字列を変換することで計算を行う「DNAコンピューティング」が、1994年のAdlemanによる実証実験を契機として盛んに研究されました。しかし、DNAコンピューティングではDNA分子は文字列の記録メディアに過ぎず、計算の各ステップは人間が行う実験操作で実現されます。そのため計算には、プログラムに相当する実験プロトコルを把握した人間と各種の実験機器を使用した操作を行う実験室が必要となります。そこで私たちは、1滴の溶液中で起こる分子反応で全ての計算プロセスを実現する「試験管内知能(in vitro Intelligence)」の研究に取り組んでいます。
 

【研究成果】

現在準備中です。

SAT Engine

― “DNAで計算する” から “DNAが計算する” へ

Whiplash PCR

― 1分子のDNAが多段階に計算する

Methylation Computing

― エピジェネティックな情報処理の活用